現場でのエピソード:建築現場で知った、地域に根付く温かさ

私はもともと宇治市に住んでおり、仕事場まで往復3時間ほどの距離を毎日通っていました。その生活を続ける中で、体力的に負担が大きく、去年から寝屋川市に引っ越しました。もちろん、仕事場との距離が近くなるという利便性が引っ越しの大きな理由の一つでしたが、それ以上に心に強く残っている出来事があります。

そのきっかけは、以前門真市の現場で働いていたときのことでした。当時、その現場では工事が進む中で、ご近所の方々とお話しする機会が多くありました。最初は現場の状況についての質問や雑談程度の内容でしたが、次第に日常の話題など、より親しい会話ができるようになりました。ご近所さんと顔を合わせるたびに声をかけていただき、少しずつその地域の温かさを感じるようになっていきました。

特に印象に残っているのは、近所のおばあちゃんとのエピソードです。その方は私が女性だということに気付き、「女性やし、トイレとか困るよね?」と気遣ってくださったり、「ご飯食べるところなかったら、うちの家で食べてもいいよ」と声をかけてくださいました。その言葉だけでも十分ありがたく、心に沁みました。

実際、現場でのトイレ事情や昼食の取り方は、現場作業員にとっては大きな課題の一つです。最近では女性も増えて、以前に比べて働きやすい環境にはなっていますが、まだまだ改善の余地があります。例えば、現場では女性が利用できるトイレが設置されていないことも多く、私は近所のコンビニを利用し、何か買い物をすることでトイレを借りるようにしていました。また、昼食に関しても、現場内で食べることができないため、職人さんたちは車や敷地内の外で食べることがほとんどです。その様子を近所の方が気にかけてくださり、親切に声をかけていただいたことが本当にありがたかったです。

門真市での現場を経験したことで、地域の人々の優しさや温かさに触れ、私の中でその地域への印象が大きく変わりました。それがきっかけとなり、すぐ近くの寝屋川市に住むことを決めました。引っ越した後も、寝屋川市の人々の親しみやすさや暖かさを感じる日々が続いています。

家づくりの仕事は、ただ物理的な建物を建てるだけでなく、その地域に新しいつながりやコミュニティを生むきっかけでもあると感じています。門真市での経験を通じて、「家づくりを通して住む人たちが幸せになれる環境を提供したい」という想いがさらに強くなりました。これからも、その想いを大切にしながら、仕事に取り組んでいきたいと思います。

寝屋川市に住む理由。それは単に仕事の利便性だけではなく、そこに住む人々の優しさと温かさが、私の心を動かしてくれたからです。

この記事を書いた人

鳥羽 世喜
鳥羽 世喜
エッグ住まいる工房 工事・施工管理担当
音楽や美術などの芸術が好きで単身日本に留学し、建築の道を志したソウル出身の現場監督。二級建築施工管理技士補を持ち、自分自身が自宅をリノベーションした経験の中で悔いが残ったことから、お客様が同じ思いをしないようにと自らの経験なども記事内で語る。