注文住宅の醍醐味 勾配天井や吹抜けで空間設計をする

注文住宅の家は、その建物の中に本当にたくさんの「欲しい」が詰め込まれて完成します。間取りはご夫婦の考える理想の動線計画を。設備はお手入れや掃除のしやすい設備を。デザインは好きなアイテムや色を取り入れたものに。
そんな自由設計の注文住宅では、建売分譲住宅などであまり採用されない設計があります。それが今日のテーマ。勾配天井と吹抜け。今日はこの勾配天井や吹抜けに注目して解説していこうと思います。

みなさんこんばんは。エッグ住まいる工房の竹澤貫と申します。

勾配天井とは

勾配天井というのは、天井が屋根のカタチに沿って斜めに高くなっている天井のことを指します。そのため上層に屋根ではなくフロアがある場合この勾配天井は作りたくても作れません。条件はありますが、建物の作り方によってはこの勾配天井の効果で天井の高さを4~5mまで上げることも可能なのがこの勾配天井。この条件が理由で特に平屋の家や2階リビングの家などでは採用されやすい点も特徴のひとつと言えるかもしれません。

吹抜けとは

吹抜けというのは、上層階に床を作らず穴をあけることで、そのまま上層階の天井が見える空間設計のことを指します。一般的にLDKや玄関・階段周りに採用されることが多いこの吹抜けという空間は、本来居室を作る事のできる空間を空白の場所にする必要があるため、限られた敷地面積の計画の場合は採用しにくいものとなります。

勾配天井や吹抜けのメリットとデメリット

勾配天井や吹抜けのメリット

天井が高くなり、開放感のある空間を作ることができる

最も分かりやすい特徴が、この解放感が生まれるという点。通常一般的な部屋の天井高さは約2.4m。その天井の高さがおよそ2倍ほどまで上げられるため、視線の抜け方が大きく変わります。天井に木を貼ったり黒くしたりするようなデザインが好みの場合、天井に色が入ると圧迫感が生まれるというデメリットがあるため、こういった天井を上げる工夫と合わせることで、圧迫感なく空間を広げることができます。

高い位置に窓を取れるようになるため、部屋が明るくなる

街中で注文住宅を建てる時に起こる場合がある問題。「南側の建物が近く日当たりが確保できない」というケース。それも、この方法で解決可能になる場合があります。通常の2階建て、3階建ての建物に付ける窓よりもかなり高い位置に窓を取ることができるため、日中薄暗い空間にならなくて済むというメリットがあります。

注文住宅の家でしかあまり使われていないため、オンリーワンの家を作ることができる

完成した家を販売する建売分譲住宅の場合、この勾配天井や吹抜けはあまり採用されていません。(工事の手間がかかることと、作っても延べ床面積などは増えないため、家を販売する会社にとって広告上あまりつけるメリットがない)
明るさや開放感という要素以外にも、純粋に好きだから!で選ぶ方もいるのがこの勾配天井と吹抜けです。そんな方は特に以下のデメリット部分をぜひ確認しておいてください。

勾配天井や吹抜けのデメリット

冷暖房効率が落ちる

勾配天井や吹抜けを注文住宅建築時に採用すると、ここまでで「開放感」という単語を多用しましたが、実際に開放されていて空間が広い分冷房をつけて冷えるまで、暖房をつけて暖まるまでの時間は、当然通常の天井高さの空間にくらべ時間がかかります。この後でこの冷暖房効率についてはもう少し詳しく触れます。

将来的な照明器具の交換に、高所作業などの追加費用がかかる

お客様方はご存じなくて失念しがちなのが、この照明器具交換という要素。昨今の新築住宅では、ほぼ全ての部屋でLED照明が採用されており、そんなLED照明器具の交換は、皆さんがイメージしているキュルキュル回して電球を換える交換方法ではありません。器具本体を電気業者が交換することになるため、その交換作業を依頼する際お高くなります。

採用する時に絶対気をつけて欲しいこと。家の断熱について

「家の断熱性能の数値はいくつですか?」

正確には数値がいくつであるかはまず一旦それほど大切ではありません。
数値を気にするレベルで断熱性能にこだわって建てられた家かどうかを確認するのがオススメ という話になります。今多くの注文住宅を建てる会社がある中で、この「断熱性能」という単語はある種トレンドのようになっていて、SNSなどで勉強をしたお客様がたくさんいる背景からあまり蔑ろにする会社はなくなってきました。ただし、「今の家はどれも断熱はしっかりしてますよ」とか言う会社は注意が必要です。

「屋根断熱ですか?天井断熱ですか?」

勾配天井や吹抜けを作ると冷暖房効率が落ちる話は先ほど触れましたが、その要因は大きく2つあり、ひとつは先の説明で触れた通り、空間が純粋に広がるからということ。そしてかなり重要なのがもうひとつ。屋根裏にどんな断熱がほどこされているかということです。特に勾配天井では、通常建築時に生まれる屋根裏の空間がほとんどなくなり、その空間が勾配天井のある居室空間側に回るため、屋根の断熱がとても大切になります。
屋根裏の断熱は、屋根断熱という屋根の裏面に均一な厚みで断熱材を設置する方法と、天井断熱という天井裏に断熱材を並べる方法の2種類あります。断熱材において最も大切なことは、その断熱材の性能数値の良し悪しではなく、その断熱材がきちんと適切に施工されているかということです。天井断熱の方が劣っていて、屋根断熱の方が優れている。という話ではなく、工事の方法が多少複雑で手間がかかる分、きちんと決められた厚みや量を取付する屋根断熱の方が、より安心材料にはなるのではないかなと思うところです。

断熱性能が高ければ熱が逃げない

空間が広い分部屋を快適な温度にするために時間はかかります。ですが、家の断熱性能さえきちんと高性能な家にしていれば(特に屋根裏)光熱費がめちゃくちゃかかる家になるというような心配はありません。私たちはエアコン1台で家中が快適になるレベルを目指してお住まいをつくります。それはつまり、吹き抜けの空間どころか家中が1つの空間になるような考え方です。勾配天井や吹抜けをそもそも作らないという選択肢はもちろんアリですが、その作らない理由が「光熱費のロス」だけの理由である場合、今一度根本的な建物の断熱性能のところから改めて考えてみるのはいかがかなあと思うところです。

勾配天井や吹抜けをオススメするわけじゃない

いかがでしたでしょうか。今日ここではテーマの特性上、注文住宅を建てる場合における勾配天井や吹抜けについて「いいものですよ~」という説明に傾倒する内容となっておりますが、必ず全ての方にオススメかというと決してそういうわけではありません。
根本的に天井はむしろ低い方がなんか落ち着く。そういう観点ももちろんありますし、家族にとても寒がりな人がいる。そんな場合もやめておいた方がいいかもしれません。ですが、今この勾配天井や吹抜けを調べると、どちらかというと「やめておいた方がいいよ」というデメリットに寄った記事を多く見て、いやいやそんなことないですよと思ったもので、今日はこんなテーマで書かせて頂きました。
この勾配天井や吹抜けについて、「絶対つけない!」という方で、この光熱費部分をかなり気にされていた方が今日ここでもしいらっしゃれば、少しでもこの勾配天井や吹抜けという選択肢をもって頂ければ嬉しいなと思っております。

この記事を書いた人

竹澤 貫
竹澤 貫
エッグ住まいる工房 取締役副社長/営業・広報担当
大手ハウスメーカー、中規模ビルダーの営業経験を経て、エッグ住まいる工房で「笑顔を作る住まいづくり」についてお客様に発信をし続けている。
パソコン・Web関係に強く、Instagramの公式アカウントでは毎週金曜日に失敗しない住宅計画についてライブ配信を行っている。